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ナビゲーター/事業承継の王道/素晴らしい事業承継を目指して/(41)/譲った後の留意点~その2~/相談への対応を変える

2022年10月12日(水) AM5:00 EX) [有料会員限定]1,241文字


 次に、承継後において、譲った者が留意すべき態度・行動についてお伝えします。
 譲る前は、幹部社員からの相談事、取引先や金融機関などからの依頼事項など、経営に関わる重要な事柄は、すべてご自身に寄せられていたことでしょう。ところが、社長の座を譲った途端、それがなくなってしまいます。社長が会社のトップであり、すべては社長の意思決定によらなければならないわけですから、ご自身に相談が来なくなるのは、あるべき姿です。しかし、昨日まであった当たり前がなくなることは、譲った者にとって、最も寂しく、かつ、つらいことであるようです。
 もちろん、正しい意思決定ができるのは、百戦錬磨の経験から、あらゆる物事を習得してきた先代であることは、誰も疑うところがない事実です。また、意思決定しようと思えばできなくはありませんし、社長を差し置いて、社内外に発信することもできます。
 ただ、それは決してやってはいけないことです。その意味において、社長の座を譲るとは、最終の意思決定と、それを自ら内外に示す権利を放棄することであるという認識が、一番必要なのかもしれません。
 一方で、相談・依頼する側も、本当は「先代に相談したい」「先代が決めて欲しい」という気持ちがあることも事実でしょう。相談する側が一番求めているものは”即答”です。残念ながら、経験に乏しい新社長には、できない相談です。このギャップを埋めるために、譲った者がしゃしゃり出るようになると、次第に”社長飛ばし”や”双頭政治”といった弊害を生みだし、スムーズな事業承継どころか、新旧経営者がたもとを分かつ結果にさえなってしまうことがあります。
 では、どのような対応が必要なのでしょうか。
 まず、直接相談があった際には、「社長には聴いたのか?」という一言が必要です。「まだ」という回答であるならば、「それは筋が違う」と突き放す必要があります。ここでホイホイと相談に乗るようでは、既に罠にはまっているとの認識が必要です。
 「聴いたけれど、明確な回答が得られなかった」ということであれば、「それは、君たちが意思決定に必要な情報を伝えていないだけだ」と突き放す必要があります。その上で、「社長はまだ、私と同じようにはできない。その足りないところをあなたたち幹部に補って欲しいと思っている。どうか、一緒に考え、成長していって欲しい」と期待を伝えましょう。それが、最高の幹部教育になります。そして、幹部社員が、自分の役割をきちんと認識することによって、一枚岩の経営陣の育成につながっていくのです。
 彼らが退出したら、すぐに社長の携帯に電話を入れ、幹部社員から相談があった事実を伝え、「私だったら、このような指示を出す。後はお前が考えろ」とアドバイスを与えてみてください。これもまた、最高の社長教育になります。
 社長の座を譲るとは、「相談に乗る」という魅力的な仕事を放棄する肚括(はらくく)りが必要です。
 【名南経営ゼネラルマネージャー
 亀井英孝】 (水曜日に掲載)

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