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岸田政権1年/(上)/誤算続きで支持率低下/国葬、裏目に出た決断/首相の「聞く力」正念場

2022年10月12日(水) AM5:00 EX) [有料会員限定]1,176文字

安倍元首相の死亡を受け、厳しい表情で取材に応じる岸田首相=7月、首相官邸

2021年8月、自民党総裁選出馬表明の記者会見で「岸田ノート」を掲げる岸田文雄氏=国会


 9月30日朝、首相官邸の執務室。岸田文雄首相と向き合った自民党の遠藤利明総務会長は「おととしより今の方がはるかに良いよ」と励ました。急落する内閣支持率と比べたのは、「ポスト安倍」候補の岸田人気が1桁台にくすぶっていた時のこと。首相は「そうだね」と気丈に振る舞った。
 2020年、21年の自民党総裁選で選対本部長を任せ、首相が心を許す遠藤氏。安倍晋三元首相国葬と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題で首相がめいっていないか気遣い「所信表明演説では混乱を招いた反省の弁を述べた方がいい」と助言した。演説の「厳しい声に向き合う」とのフレーズにつながった。
 首相は4日、政権発足から1年を迎えた。周辺は「決断の連続だった」と振り返る。就任10日後に衆院解散。自民党は議席を減らしたが追加公認を含め絶対安定多数を確保した。新型コロナウイルス感染「第6波」では今年1月、まん延防止等重点措置を適用する。今夏の第7波では自身も感染。社会経済の行動制限は選択しなかった。2月にはウクライナ侵攻が起き、欧米と連携して対ロシア制裁に踏み切った。
 党内第4派閥会長の首相は「国民の支持が生命線」(政権幹部)だ。世論の風向きを気にした、これらの決断。コロナ対応で後手批判を浴びたものの、内閣不支持率は共同通信世論調査で8月まで20%台に抑えてきた。
 「決断と実行。」を党キャッチコピーにした7月の参院選。投開票2日前の安倍氏銃撃事件を経て自民党が大勝し、直後の内閣支持率は同63・2%と政権最高に達する。事件6日後、首相は国葬を発表した。「国民全体で安倍氏を悼む雰囲気」(官邸筋)を背景に、歴代首相の内閣・自民党合同葬より「格式の高い形」(党幹部)を選ぶ。絶頂の後、苦境が訪れた。
 官邸側は、事件後から指摘された旧統一教会との関係を当初「おおむね安倍派の話」と人ごととして捉えた。首相が初めて教団に言及したのは7月31日になってから。自民党の対応の遅れが重なり、国葬と負のスパイラルを生む。国民に政治不信の芽が膨らんだ。
 官邸幹部は「教団と党の関係がここまで根深いとは思わなかった」と判断ミスを認める。報道各社調査の内閣支持率は不支持率より低い現状。国葬の決断が裏目に出た。
 首相は昨年8月26日、当時の菅義偉首相に挑む形で総裁選に名乗りを上げた。国民の声を書き留めたA6判の青い「岸田ノート」を手に掲げ「わが国の民主主義が危機にひんしている」と訴えた。首相は今「聞く力」を政権運営に生かせるかどうかの正念場を迎える。
 国葬を終えた先月27日夜。首相は一般献花に想定を上回る2万人超が参列したとの報告を聞き、安堵(あんど)の表情を見せた。「これで少しは風向きが変わるといいけどな」
 
 
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 政権発足から1年。直面する課題や、政策決定過程、政権基盤の変化を検証した。

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