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東海財務局長、伊野彰洋氏に聞く中部経済の見通し/インタビュー/中部圏特集 第2集/25~36面/(いの・あきひろ)/自動車産業の生産回復がカギ/底堅い動きで安定成長へ/金融機関「本業支援」に期待

 長期化する新型コロナウイルス感染症拡大の影響は縮小しているものの、景気の完全回復には至っていない。急減な円安に伴う物価高や原材料高、ウクライナ情勢悪化などを背景にした資源価格の高騰が企業収益の下押し要因になっている。こうした懸念材料はあるものの、半導体不足などで減産を強いられる自動車産業の生産が正常化に向かうことを望んでおり、「経済は基本的に底堅い動きをしている。安定して成長していくことを期待している」と語る、東海財務局長の伊野彰洋氏に今後の見通しなどを聞いた。

2022年10月12日(水) AM5:00 EX) [有料会員限定]2,442文字

「スタートアップ(新興企業)へのサポートもできることで応援したい」と話す伊野局長


 ―足元の景況感は。
 「当地は製造業中心の経済であり、比較的コロナ影響で苦労しているのは、非製造業系の会社が多い。原材料高や部品不足などで生産がうまくいっていない点などの問題はあるが、経済自体はトータルでみれば、安定して成長している状況といえるだろう」
 ―長期化しているコロナ感染症の影響が緩和されている様子だ。
 「業種により異なる。さらに業種の中でも、どういったお客さんを相手にしているかで大きな差があると思う。経済全体ではいい状態になってきてはいるが、サービス産業を中心に、比較的コロナ前の状態に近い回復の会社もあれば、回復が途上の会社もあると思う。富裕層を得意とし、高額商品を販売している会社などは非製造業の中でも業績は比較的回復にある。家族向け(の商品やサービス)を対象にしている企業や、飲食業はまだまだ厳しい経済状況のようだ」
 ―9月に発表した東海4県(岐阜、静岡、愛知、三重)の7~9月期の法人企業景気予測調査は、全産業の景況判断指数が前回(4~6月期)から3・9ポイント改善し、マイナス8・6だった。マイナスは3四半期連続だが、輸送用機械、鉄鋼といった製造業が改善した。
 「中小企業は回復感が鈍いようだが、業種によって景況感に差はある。当地の中心である製造業では、理由に関して少し変化がある。以前はコロナ影響に伴う部品不足など、生産が思うようにいかず、売り上げのめどが立たない、という理由が多かった。最近は資材の高騰や燃料費、運送費など経費面でかなり苦労されているという話しを聞く。非製造業においても、人件費など経費面が(業績)下押しの要因になっている」
 ―今後の見通しは。
 「先々を予想するのはなかなか難しいが、当地は自動車産業の経済に与える影響がかなり大きい。部品不足などの問題が解消して、生産が軌道に乗っていくのかが重要な要素になる。サプライチェーン(供給網)でいえば、コンテナ船の運航も比較的安定している。中国での(新型コロナ感染拡大に伴う)ロックダウン(都市封鎖)もない。サプライチェーンの安定が図れれば、生産の受注面では積み上がっている状況の様子なので、製造業の生産が軌道に乗れば、(景気の)安定した状況が続くと見ていいのではと思う」
 ―コロナ影響などに伴い、企業業績は完全回復に至ってはいないが、倒産件数は低く抑えられているようだ。
 「倒産件数が少ないこと自体は経済全体にとっていいことだろう。しかし、業績がいいから倒産が少ないのか、それとも(政策的に)資金繰りがしっかりと支援されているから倒産に至らないのか。しっかり注意してみる必要がある。コロナ影響で業績悪化を受けた影響で企業への融資、資金繰りは公的なサポートもあり、しっかりと支援がされている状況だ。コロナ影響などで財務的にかなり厳しい企業は多い。それをしっかりと支えるのは行政や金融機関の役割でもある。しっかりと利益が出る企業体質に回復していただき、いずれどこかで少しずつ(資金を)ご返済していただかないと、サステナブル(持続可能)な状況にならない。そこはしっかりと金融機関の皆さんにみていただきたい。さまざまな課題を抱えている企業に対し、しっかりと金融機関がサポートしてほしい。本業回復へのご支援をしていただくことが大切だと思う。また、金融機関だけでなく、公的機関も含めて、(企業活動を)サポートするさまざまなツールが用意されている。(企業も)本業の回復を目指してほしい」
 ―当地域でも銀行同士の経営統合による新たな金融グループが誕生している。愛知銀行と中京銀行は2年後をめどに銀行同士の合併を目指している。
 「金融機関同士が合併することにより、間接部門の経費が効率化するなどの統合メリットがでてくる。仕事の重複を減らし、人員的な余裕も出てくる。その力を取引先のサポートにどう振り向けていただけるか、という点が重要なところだ。財務面、人材面の余力をしっかり活用し、企業の皆さんをどうサポートしていただけるか。そのサポートによって対価として(銀行としての)利益も増やしていけるだろう。そうした取り組みを活発にしていただき、取引先に喜んでもらえれば。そうした好循環をうまくつくっていただけるとありがたい。ぜひ期待したい」
 ―地域金融機関の取引先では、人手不足で課題を抱える企業も少なくないようだ。
 「例えば、地域金融機関が取引先企業の支援策として、しっかりと企業の課題を経営者の方と共通認識を持つことが重要だ。『こういう人材が欲しい』と話す経営者が抱える本当の課題について、一緒に考えてもらえれば。なぜ、その人材が必要なのかの話しをしていると、実は違うところに課題があることに気が付くケースもある。企業の課題について、金融機関の担当者に把握していただくのが肝だ。企業との対話をしっかりと金融機関にやっていただきたい」
 ―東海財務局として力を入れるところは。
 「中小企業の皆さんを中心に金融機関と関連のある職種として、税理士の皆さんがいる。例えば、中小企業の経営をご存じの税理士と一緒に、経営課題などさまざまなことを考えていただければ。また、(経済活性化へ向けた)スタートアップへの支援について、資金繰り面でどうバックアップしていくのかも重要になる。(セミナーの企画開催など)こうしたサポートについてもできることで応援していきたい」

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